豊川稲荷(とよかわいなり、愛知県豊川市)は、大小2000体を超える白狐(びゃっこ)の像で知られる「お寺」で、その壮観な光景から観光地としても人気を集めるパワースポットです。
ご利益も実は「商売繁盛」にとどまらず、「縁結び」、「開運」、「災難消除」など多岐にわたります。
また、11万5千㎡の広さ誇る豊川稲荷のみどころは、狐の像が密集する「霊狐塚」(れいこづか)だけではありません。
頑丈な欅(けやき)で造られた巨大な本殿や金運アップの「大黒天像」、「千本幟」(せんぼんのぼり)など数え切れず、表参道商店街名物の「稲荷寿司」も聖地巡礼の旅に彩りを添えます。
このほか、地元で知られる独特の願掛けなどがあり、豊川稲荷は「ご当地グルメ」とセットでじっくり半日かけて参拝するのがおすすめです。
その一方で参拝に当たっては、事前に知っておくべきポイントがいくつかあります。
今回は、心願成就のパワースポットであり、また、日本三大稲荷のひとつに数えられる豊川稲荷に行ってきました。
ここでは、知らぬと恥をかく参拝のイロハや願掛けの方法、外せない見どころ等々、「豊川稲荷の歩き方」を解説いたします。
また「霊狐塚」がパワースポットである理由や「怖い噂」の真相、ランチでイチオシのお店、御朱印、駐車場、アクセス情報などのお役立ち情報も掲載していますので、あわせてご覧ください。
Contents
豊川稲荷 神社じゃない?正しい参拝方法は?
「豊川稲荷の歩き方」をご紹介する前に、まずは基本となる大切なポイントから。
豊川稲荷は、座禅の修行で知られる「曹洞宗」のお寺で、神社ではありません。
正式名称は「円福山 豊川閣 妙厳寺」(えんぷくざん・とよかわかく・みょうごんじ)といいます。
誤解を恐れず、分かりやイメージをお伝えすると、豊川稲荷はお寺のなかにある「神社の部分」に当たります。
そのため本殿へと続く参道には、神社のトレードマークである「鳥居」の姿も。
ただし、鳥居の横木をよくみると「卍」の文字が刻まれていて、あくまでもお寺であることを示しています。
さて、神社ではお賽銭箱の前でパンパンと2度拍手(かしわで)を打って参拝しますが、この作法、お寺では原則NGです。
豊川稲荷では、まず本殿に向かって静かに手を合わせ、以下の真言(マントラ)を7回唱えるのが正解です。
- 「おん しら ばった にり うん そわか」(唵尸羅婆陀尼黎吽娑婆訶)
そのうえで「住所」と「氏名」、「願い事」を心のなかで伝えます。
ざっとここまでが正式な参拝の作法となりますが、本殿に向かう前に、必ず足を運んでおきたい場所があります。
それは「霊狐塚」です。
豊川稲荷 パワースポットの霊狐塚へ
霊狐塚は、境内の一番奥にあり、鋭い目をしたものから優しい笑みをたたえるものまで、さまざまな表情を浮かべる白狐像が立体的に並んでいます。
モノトーンの空間のなかで、赤いよだれかけと木々の緑がアクセントとなって、幻想的な空気を醸しています。
この不思議な光景に魅せられて、遠方から豊川稲荷に足を運ぶ人も少なくありません。
一般的に「大小1000体」がうたい文句になっている霊狐塚の白狐像ですが、地元案内人の説明によると、正確には800体程度だそう。
ただし、そのすべてが「願いを叶えた人が納めていったもの」という点は変わりありません。
昔は別の場所に…
豊川稲荷に持ち込まれた白狐の像は、古くは「別のところ」に集められていました。
それは、奥の院のさらに奥、お寺でもごく一部の僧侶だけが立ち入りを許された神聖な場所「内殿」(写真上)です。
ただ内殿の敷地は、昭和の時代に入ったころ、奉納された白狐の像で埋め尽くされてしまいます。
そこで豊川稲荷は、新しい保管場所探しに乗り出しますが、このとき選ばれた代替地が「霊狐塚」でした。
その後も白狐像の奉納はとどまることを知らず、みるみる増えていくうちに、霊狐塚は「平成生まれのパワースポット」と化します。
つまり、「願いが叶った人の思いであふれかえる場所」というのが、霊狐塚の実像に他なりません。
地元の案内人いわく「まずはこちらでパワーを頂いてから、本殿にお参りするのがおすすめ」だそうです。
下世話な話、白狐像は小さいタイプでも一体8万円以上かかる代物。
人目につかない内殿の白狐像を含めると、その数は軽く2000体を超えます。
それは、豊川稲荷のご利益の大きさと信仰の厚さを物語ります。
ただし、後段で詳しく理由を解説しますが、白狐像には絶対に触れないようご注意ください。
硬貨を見つけてお金持ちに!?噂は本当?
霊狐塚の一帯は、かつて雑木に覆われていて、遠くの山まで森でつながっていたといいます。
先の大戦のおりに軍需工場ができるなど、時代の流れとともにこの森は、地上から姿を消しました。
もともと霊弧塚は、そんな森に暮らす狐の霊をなぐさめるために設けられた「小さな霊地」だったといいます。
大小800体に及ぶ狐の表情に違いがあるのは「つくられた年代の差」で、きつい顔をしたお狐様が「昭和生まれ」、優しい眼差しを向けているのが「平成生まれ」、真新しいのが「令和生まれ」といった具合になります。
霊狐塚には、そうした多彩な白狐の像のほかにも、高さ2mほどの凸凹(でこぼこ)した黒い岩石があります。
この岩石は、霊峰・富士山から持ち込んだ神聖な溶岩で、「般若心経」と「宝玉」をくわえた1対の白狐像がにらみをきかせています。
威容をみせるこの溶岩、ちまたの噂では、凸凹のなかに硬貨を見つけて持ち帰ると「お金持ちになれる」というジンクスがささやかれています。
これを実現させた人は「持ち帰った額以上のお金を返しに来なければならない」というルールまで存在します。
休日になると、そんな「ラッキーコイン」を求めて、岩を取り巻く人たちでいっぱいになります。
とても面白いゲン担ぎですが、神聖な岩石だけに、立札には「よじ登ってはならない」との注意書きも。
何より、「ラッキーコインをみつけてお金持ちになった」という話は、噂レベルでもあまり聞いたことがありません。
そこで、豊川稲荷に直接確認したところ「硬貨をみつければお金持ちになれる」という噂はいわゆるガセネタで、むしろ「災いを招きかねない危険な行為」にあたるようです。
誤って狐の像に触れると…
豊川稲荷の関係者が指摘する「災いを招きかねない危険な行為」とは何か。
それは、霊狐塚に奉納された白狐像に誤って触れてしまうことです。
豊川稲荷の関係者は、おかしな噂が独り歩きせぬよう、言葉を選びながら説明してくれました。
これを要約すると「あくまでもご自身のために、白狐像には触らぬようにしてください」ということになります。
といっても、もちろんお狐様自体が怖いわけではありません。
豊川稲荷の関係者いわく「人の強い念がこもった像に触れると、災いをもらいかねないため」だといいます。
にわかには信じがたい話かもしれませんが、これは「実例がいくつもある実話」のようです。
いわば、お酒の飲めない人に「テキーラ」を飲ませるようなイメージでしょうか。
そうした基本を無視し、万一災いが降りかかるようなことになれば、せっかくの「パワースポットめぐり」も台無しです。
逆に言えば、豊川稲荷はそれだけ「力のある聖地」といえ、節度のある参拝を心がけさえすれば、「大きなプラスの力」が得られるかもしれません。
豊川稲荷 金運アップの大黒天像
豊川稲荷で金運アップのご利益を頂けるのが「大国堂」の両サイドを固める大黒天像。
この石像を手で優しくさすれば「福徳を授かる」といわれます。
大黒天像に触れる願掛けは、全国的にみても「オーソドックスな部類」に入り、「宝くじが当たった」などのご利益話がいくつも漏れ伝わるところです。
ただ大国堂の大黒天像はよくみると、お腹や小槌、膝などのあたりがえぐられています。
これは「大黒天像の粉末を財布に入れておくと、お金が増える」という噂によるものです。
これを信じて、実行に移した人は1人や2人ではありません。
全身をコインで削っていった結果が、下の写真です。
お堂の前に立ついまの大黒天像は、3代目だそう。
呪いの願掛けで枯れてしまった「千代保稲荷」(岐阜県)のご神木しかり。
全国の聖地をめぐっていると、時に「たたり」や「バチ」などの話も耳にしますが、本当に怖いのは人の欲望なのかもしれません。
豊川稲荷 総門が凄い!運気アップのご利益も
少し怖い話が続きましたが、ここからは「明るい話題」です。
まずは、豊川稲荷(豊川閣妙厳寺)の正面玄関、高さ4.5mの「総門」について。
素通りするにはあまりにも惜しい建造物といえ、頭上には煩悩(ぼんのう)を滅し最高の境地に達した十六羅漢の姿、柱の最下段の金具には、黄河上流で鯉が龍になる中国の故事「登龍門」にまつわるストーリーが彫刻で描かれています。
特筆すべきは「扉の部分」で、一本の巨大な欅(けやき)から切り出した「厚さ15cmの板」を組み合わせてつくられています。
さて、ここからが本題になりますが、この扉には左右で異なる特徴があり、向かって右側は「こぶ状の膨らみ」、左側には「へこみ」があります。
地元で知られる願掛けというのは、行きと帰りに扉を触って「運気アップのご利益」を頂くもので、具体的には以下の手順になります。
- 門に入るときに扉のへこみをなでて「マイナスの運気」を吸わせる
- 門からでるときに扉のこぶに触れて「膨らむ運気」をもらう
ちなみに、こぶがある方は、欅の表面近くから切り出された板で、へこみがある方は芯に近いところにあったものです。
豊川稲荷 本殿 しめなわ念珠で開運
豊川稲荷の立派な本殿は、明治期に建設プロジェクトが立ち上がり、完成までに25年の歳月を要したとてつもない建物です。
高さ約30m、幅約20m、奥行き約40m。
欅(けやき)という堅い木を使った本殿は、宮大工さんを泣かせながら、「明治」「大正」「昭和」と時代を3つまたいでようやく完成に至ります。
また、寄付金を集める歳月を含めると、計画からプラス数十年の年月がかかった計算になるのだとか。
「妻入二重屋根三方向拝」という難しい名前の構造だそうです。
この地域の情熱が詰まったありがたい本殿では、「開運しめなわ念珠」と呼ばれる願掛けに挑戦できます。
やり方はとても簡単。
念珠の白い紙の部分に願い事を書き、一心に祈りを捧げます。
縁結び、心願成就、出産安全、学業成就、出世、営業繁盛、災難消除…。
願いごとは何でもOK。
志納金は200円、備え付けの集金箱に入れるシステムです。
そのまま持ち帰ることもできますが、「奥の院」にある専用の台(三宝膳)に納めて帰ることもできます。
お祭りされるのは外国の神様!?
話が前後しますが、豊川稲荷のお祭りされる神様は、「狐」ではありません。
お狐様は、神様のお使い「眷属」(けんぞく)といわれる存在です。
また、一般的な稲荷神社に祭られる「宇迦之御魂神」(うかのみたまのかみ)とも異なります(同一視する見方もあります)。
豊川稲荷の御祭神は、荼枳尼天(だきにてん)という「外国からきた女神様」で「仏教の守護神」に当たる存在です。
白狐にまたがり、はるばる海を越えてやってきたと伝わります。
豊川稲荷同様、「お寺のお稲荷さん」である岡山の最上稲荷にも、同じ神様が祭られています。
豊川稲荷 参道にも風水の秘密が
本殿へのアクセスするのに、2つの鳥居をくぐることになりますが、よくみると、参道は「7枚の石畳」からなります。
これは、左右の3枚が人の通路、中央の1枚は「神様の通る道」をあらわしています。
また、参道が途中で屈折していますが、こちらは「風水の知見」によるものです。
参道と本殿を直線に結ぶと「エネルギーの流れが強くなりすぎる」という考え方があり、これを防ぐべく、あえてずらしているわけです。
長い道にぶつかる家の軒先に、「鏡」が置いてあるのをみかけることがあるかもしれませんが、大阪在住の気功師いわく、これも「強すぎるエネルギーを跳ね返すためのおまじない」だそうです。
また、ルートを少し歪めることで、帰るときに「神様にお尻を向けない配慮」にもつながります。
豊川稲荷 千本幟で心願成就を
豊川稲荷で「霊狐塚」に次ぐ名物といえるのが、「千本幟」(せんぼんのぼり)。
本殿から霊狐塚、裏門に至るまで、統一感のある幟がずらりと並び、風を受けてはためいています。
千本幟の名前の由来は、その数の多さにありますが、実は千本どころではありません。
通常時で4000本、お正月シーズンには7000本に達するそうです。
奉納は誰でもでき、2000円の志納金を納めて、住所、氏名、願い事などを書き込むだけです。
幟の設置期間は4カ月間になりますが、正月に限り2か月間に早まります。
豊川稲荷 安くで泊まれる!精進料理も
豊川稲荷は、宿泊も可能です。
朝夕の精進料理とともに、翌朝のご祈祷の参拝も許されます。
志納金は「精進料理」「ご祈祷」「紙のお札」が付いて1人8000円。
お札のグレードで値段も上がるイメージで、木製のお札付きは9000円、箱タイプのお札付きは1万円となります。
ホテルのようなサービスは期待できないかもしれませんが、遠方から豊川稲荷に参拝する場合、宿泊先として有力な選択肢となるに違いありません。
ちなみに、座禅体験は団体客のみの対応となるそうです。
豊川稲荷 御朱印
豊川稲荷の御朱印です。
力強い筆致で神名が記されています。
志納金は300円。
平日とあって、すぐに書いて頂けました。
豊川稲荷 ランチのおすすめは?
豊川稲荷参道商店街で、ランチのおすすめは「門前そば山彦」さんのセットメニュー、「稲荷門前きしめん」(1050円)です。
この地の名物と「名古屋のソウルフード」が一度に味わえます。
とくに門前そば山彦さんは、「しにせ」をうたうお店だけに、稲荷寿司の味は素朴にして格別。
形は関東風の俵型、酢飯のなかには、ひじき、にんじん、しいたけ、たけ子のほかに、「くるみ」も入っています。
ただ、管理人が本当に感激したのは、実は「きしめん」です。
お店の方いわく、国産の小麦を使った「手打のちきしめん」で、この地域のものは「細さ」に特徴があるのだとか。
ただ、一般的なきしめんに比べると随分太く、もちもちとした歯ごたえが楽しめます。
いずれにしても、手打ちきしめんというレアなうどんは、「未知の味」となる方も多いのではないでしょうか。
お店の場所は、豊川稲荷のもより、参道商店街の入り口付近。
一目でわかる派手な看板が目印です。
豊川稲荷 基本情報
- 住所:愛知県豊川市豊川町1
- 電話:0533(85)2030
- 拝観料:無料
- 開門時間:AM5:00~PM7:30
豊川稲荷 アクセス&駐車場
豊川稲荷には専用駐車場があります。
営業時間はAM8:00~PM5:00で、出庫は24時間。
駐車料金は500円(普通車)。
祈祷を受けた人は無料になります。
電車での行き方
- JR「豊川駅」下車、約5分
- 名鉄「豊川稲荷駅」下車、約5分
車での行き方
- 東名高速「豊川IC」下車、約10分
MAP
豊川稲荷 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、愛知が誇る一級パワースポット「豊川稲荷」をご紹介しました。
豊川稲荷を参拝された方は、名古屋屈指のパワースポット「熱田神宮」にも足を運ぶのがおすすめです。
とくに御朱印は「参拝者の言い値」で決まる珍しいスタイルをとっていて、集めている方は必見です。
またパワスポ編集局ではほかにも、パワースポットとして注目を集める「お稲荷さん」の記事を多数掲載しています。
⇒東京都内屈指のパワースポット、代々木出世稲荷の記事はこちら。
豊川稲荷のまとめは以下の通りです。
- 豊川稲荷は神社ではなく曹洞宗のお寺
- 拍手(かしわで)を打つと恥をかく
- 白狐像が並ぶ「霊狐塚」は本殿より先にお参りすべし
- 霊狐塚で硬貨を持ち帰るとお金持ちになれるというのはデマ
- 霊狐塚の白狐像に触れてはならない
- 大黒天像を削ってはならない
- 総門には地元民に知られる願掛けがある
- しめなわ念珠という願掛けもある
- 千本幟も見事
- 参道には風水の知見が生かされている
- 豊川稲荷は宿泊も可能
- おすすめランチは門前そば山彦のきしめんセット
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今後とも内容を充実させてまいりますので、ご愛読の程、よろしくお願いいたします。