諏訪大社(すわたいしゃ)は、神話の時代に源流を持つ由緒ある神社で、長野屈指のパワースポットといわれています。
鹿島神宮、分杭峠、豊川稲荷、伊勢神宮など名だたるパワースポットが並ぶ「中央構造線上」に位置し、その知名度は全国区。
ケガレを嫌う神社にあって、鹿の頭(はくせい)や雉(きじ)を供物に捧げる古い神事が残されているなど、その特殊性にも注目が集まります。
ただ「諏訪大社最大のパワースポット」といえる場所は、あまり知られていない上、本宮の御柱(おんばしら)4柱をすべて参拝せずに帰ってしまう人も少なくありません。
知れば知るほどディープな諏訪大社。
今回は、そんな中部地方を代表するパワースポットを取材しました。
見どころや駐車場、アクセス情報に加え、2019年に新しくなった「4社巡りの記念品」についてご紹介します。
また、「神様が巡る季節」「イキガミ様とシャーマンの歴史」など、ちょっと不思議な話題もまとめました。
Contents
諏訪大社は4社の集合体
諏訪大社は、全国に点在する諏訪神社の総本社に当たり、国内でも最古級の神社といわれます。
諏訪大社は「4つに分かれたお宮の集合体」になっていて、日本列島のど真ん中にある「諏訪湖」を上下から挟み込むように鎮座しています。(写真上)
北にある2社が「上社」、南側の2社が「下社」と呼ばれます。
もう少し具体的にいうと、上社は「本宮」と「前宮」、下社は「春宮」と「秋宮」からなります。
これら4社がそろって諏訪大社になるわけです。
このうち、メーンのお社になるのが「本宮」で、パワースポットとしても定評のあるお宮です。
時間の都合上、すべてを回り切れない場合は上社への参拝を優先するのがおすすめです。
手と口を清める手水に「温泉」が使われていたり、日本最大級の和太鼓があったり、観光スポットとしても楽しめます。
多彩なご利益 勝運/開運/五穀豊穣
諏訪大社には、男神「建御名方神」(たけみなかたのかみ)と女神「八坂刀売神」(やさかとめのかみ)がペアでお祭りされています。
この2柱の神様、4社共通でお祭りされていますが、実は上社・下社で少し扱いが異なります。
上社で「主役の神様」(主祭神)としてあがめられているのは、男神の建御名方神の方。
「狩猟の神様」としての信仰を集めたり、水と風をつかさどる「龍神様」としてあがめられたりと、歴史や見る角度によって顔の異なる不思議な神様です。
平頼盛、足利尊氏、武田信玄など、時の権力者からは「武神」としての崇敬を集め、「日本第一大軍神」と呼ばれた時代もありました。
そのため、ご利益も多岐にわたり「勝運UP」「出世・開運」「五穀豊穣」「交通安全」などのご神徳があるといわれます。
また龍神信仰の流れから、諏訪大社で参拝中に雨が降ると「歓迎の証」といわれます。
恋愛にも効く?下社の女神のもとへ
諏訪大社は、「縁結び」や「良縁成就」など恋愛関連のご利益でも有名です。
これは、建御名方神と八坂刀売神が「夫婦」ということにちなみますが、女神「八坂刀売神」を主祭神としてあがめているのは下社の方。
諏訪大社で恋愛成就・子授かりを求める人は、下社を参拝するのがおすすめです。
この夫婦神はもともと上社、下社に分かれてお祭りされていました。
いわずもがな、上社(本宮、前宮)が建御名方神、下社(春宮、秋宮)に八坂刀売神です。
諏訪湖では冬になると、湖面の氷が割ける「御神渡」(おみわたり)という現象が起きますが、昔から「建御名方神が下社の八坂刀売神のもとへ向かった跡」といわれるものそのためです。
実際、八坂刀売神は「13人の子をもうけた」など、さまざまな説が残されていて、絶世の美女だとされます。
神様のいる時期 移動はこのタイミング
下社では、季節によって「神様がいる時期」「いない時期」があるといわれます。
これは、神様の宿る「御霊代」(みたましろ)を移動させる祭事「遷座祭」(お舟祭)が催されるためです。
御霊代が季節ごとに「春宮」と「秋宮」の間を行き来しているイメージです。
各社に「神様のいる時期」は、以下の通りとなります。
- 春宮:2月1日~7月一杯
- 秋宮:8月1日~1月一杯
最強パワースポットは「本宮」に
風水的な立地条件からも優れたパワースポットとされる諏訪大社ですが、なかでも「最強のポイント」といわれる場所があるのをご存知でしょうか。
ちまたで「パワースポット中のパワースポット」とささやかれるその場所は、本宮「勅願所」の右奥、四の柱がみえる地点となります。(上記地図参照)
「長野県天然記念物」と記された看板の隣です。
柵があるため、なかには入れませんが、その質感を感じ取ることは可能です。
神話の時代に起源をもつ諏訪大社には、とても古い信仰のスタイルが残っているため、神様の住まいとなる「本殿」がありません。
諏訪大社の本宮で本殿に当たるのは、神様の鎮まる神体山、つまり、勅願所の背後に迫る「守屋山」となります。
そして、くだんのパワースポットは「守屋山からの神気が注ぐ地点」に当たるといわれます。
実際に足を運んでみた感想として、見た目も空気の質感も、確かに違うように感じました。
神域の右奥にみえる御柱(おんばしら)は、神様が宿る「依り代」とされ、古代の神秘をいまに伝える威厳を漂わせます。
また山から注ぐ冷涼な水は、邪気を払う神聖な霊水として「龍神の鎮まる神域」を絶え間なく浄化しているような印象を受けました。
「とても神聖で心地よい場所」というのは紛れもなく、別格のパワースポットとの評判も納得です。
そんな神秘的な噂を聞きつけて、このパワースポットにたたずむ人が最近増えているのだとか。
とくにこの日は、年配の観光客らに交じって、臨月を間近に控える妊婦さんの姿を見かけました。
4社めぐりのご褒美は御朱印入れ
諏訪大社の御朱印です。
初穂料は相場より少し高めの500円。
御朱印の授与時間は午前9時から午後5時ですが、授与所が空いていれば対応してくれるようです。
参拝したのが平日だったこともあり、4社ともにすぐに書いて頂けました。
神職の方によると、お正月などはともかく、御朱印待ちで極端な混雑はあまりないとのことでした。
また諏訪大社の場合、4つのお宮の御朱印をすべて集めると、最後に訪ねた授与所で「記念品」が頂けます。
2019年からこの四社参拝記念品は不織布の「特性きんちゃく」に変わりました。
率直な感想として「粗品レベルのクオリティ」だと感じましたが、記念品を頂けるのはどこか達成感があってうれしいものです。
御朱印帳入れにすると便利です。
御柱(おんばしら)と「三の柱」のありか
諏訪大社のトレードマークといえば、「御柱」(おんばしら)。
これといった装飾のない素朴さが、かえって神秘性を高めています。
御柱は、4社にそれぞれ4つずつ、神域を守るよう四隅に配置されていて、「結界」のようにもみえます。
ただ実際のところ諸説あり、はっきりしたことは分かっていません。
神社側の説明を聞く限り、神様が宿る「依り代」としての役割があるとみられます。
前宮の御柱には「紙垂」(しで=祓具などに用いられる稲妻の形をした紙)の痕跡も確認できました。
いずれにしても、4柱をすべて参拝するのが吉です。
階段の上から「白い木」を探す
さて、本宮の御柱についてですが、「一の柱」は北参道を抜けた先、大きな鳥居をくぐってすぐのところにあります。(写真上)
太さ1.2m、高さ17mの樅(もみ)の木で、四柱のなかでも一番大きく立派でした。
順路は「左回り」。
布橋という回廊を通り抜け、事実上のゴールとなる参拝所を目指して歩いていると、「二の柱」、「三の柱」、「四の柱」が順番に姿をあらわします。
ここで問題となるのが「三の柱」。
「三之柱遥拝所」との看板が立てられていますが、樹々の茂る奥まったところにあるため、ここからだと見えません。
気を抜くと、看板自体も見落としそうです。
実は三の柱は森の中にあり、とても見えにくい場所に立っています。
三の柱は、この立て看板のすぐそばにある階段を半分ほど上ったところから確認・参拝できます。
写真中、左下に写っているのが階段です。
そして、三の柱がこちら。
少し白みがかっているのがお分かりいただけるでしょうか。
予備知識として持っておくと、すぐに探し出すことができます。
7年ごとに建て替え
ちなみに御柱は、7年ごとの寅年・申年に社殿とセットで建て替えられています。
虎と申の年は易学からみた「春」と「秋」に当たりますが、7年というスパンもそこからきているそうです。
また、一定周期の社殿建て替えは「宮大工の技術継承」でも重要な役割を果たします。
この建て替えの神事は御柱祭、正式には「式年造営御柱大祭」という厳めしい名前で、次回は平成34年に行われます。
イキガミ様「大祝」と実在したシャーマン
諏訪大社の正面玄関は、正式には「東参道側」に当たります。
ここを抜けた先、最初に目につくのが「布橋」と呼ばれる美しい回廊。
明治時代になるまで、諏訪大社のなかでも最高位の神職だけが通ることの許された聖域でした。
最高位の神職というのは、「大祝」(おおほうり)という肩書を持つ「少年」です。
大祝は「建御名方神の末裔」とされ、限られた血筋の人間が選ばれました。
その候補者には厳しい修行が待っていて、「諏訪から離れてはいけない」「けがれたことをするのはご法度」など、厳しいルールが設けられていたようです。
「イキガミ様」としてあがめられた時代もありました。
ただ、大祝直系の血筋はもう断絶してしまったようです。
また、「大祝の代理人」を務めた神職も、とてもミステリアスな存在でした。
「ミシャグジ」という地場の神様を降ろしたり、一子相伝の秘術・秘薬を操ったり…。
流石は全国区の知名度を誇る一宮の歴史といったところです。
そんな神秘的な往時の名残が「前宮」にはまだ少し残っています。
諏訪大社 その他の見どころ
4地点のお宮からなる諏訪大社は、とにかく見どころが多く、観光地としても人気。
ここでは、そんな見どころを厳選して紹介します。
※写真は前宮の拝殿
諏訪大社の原点は「前宮」に
前宮は、諏訪大社の原点となるお宮で、少なくとも1500年以上前から存在していたといわれます。
諏訪大社で唯一本殿が存在するお宮でもあり、もともとは「ミシャグジ」がお祭りされていたといわれます。
ケガレを嫌う神道にしては珍しく、前宮の中腹にある十間廊(じっけんろう、写真上)では、4月になると鹿の肉などを供物に捧げる古式の神事が行われます。
往時は、75頭に及ぶ「本物の鹿の頭」が供えられましたが、不思議なことに、毎回耳の裂けた鹿が必ず入っていたそうです。
さらに見逃せなのが、本殿の左手にある「水眼(すいが)の清流」というせせらぎ。
御神水として禊(みそぎ)に使われていたもので、この名水は備え付けの柄杓(ひしゃく)で飲むことができます。
心身の浄化に、一杯いかがですか?
万治の石仏
春宮の参拝に当たり、必ず押さえておきたいのが、願い事を託す「万治の石仏」(まんじのせきぶつ)。
春宮のほど近くにある、高さ2mほどの石仏です。
芸術家の故・岡本太郎氏が絶賛したことで、一躍メジャーになったのだとか。
岡本太郎氏は、素朴な民間信仰に魅せられた芸術家の一人で、何冊か本も書いています。
実際管理人も、万治の石仏が醸すノスタルジックな姿に、心の深いところが締め付けられるような感覚を覚えました。
またこの石仏には神秘的な逸話が残されていて、もとの岩は「石工がノミを入れたときに血を流した」といわれます。
ひょっとすると、神様の宿る磐座(いわくら)だったのかもしれません。
怖くなった石工は、鳥居として加工するのをやめて、阿弥陀様を彫ったと伝わります。
下諏訪観光協会と下諏訪商工会議所が提唱する参拝方法も存在します。
- 正面で一礼し、手を合わせて「よろずおさまりますように」と念じる
- 願いごとを念じながら、石仏の周りを時計回りに三周する
- 正面に戻り「よろずおさめましたと」と唱えて最後に一礼する
春宮・秋宮 幣拝殿と御神木
春宮と秋宮には見事な彫刻が彫られた幣拝殿があり、見どころの一つになっています。
幣拝殿というのは、お供え物をするための幣殿と、参拝者が拝むための拝殿がセットになった建物です。
とくに面白いのは、両社の幣拝殿が酷似している点。
これは、宮大工が同じ図面で腕を競ったためだそう。
軍配が上がったのは、秋宮側だったといわれます。
秋宮には長さ13mの注連縄を張った神楽殿や、青銅製の巨大な狛犬、温泉水を使った手水舎などがあり、こちらの方が観光地としても魅力がありそうです。
ほかにも、春宮・秋宮に共通する特徴として、本殿があるべき場所に「御神木」がお祭りされている点です。
春宮は杉の木が、秋宮は櫟(いちい)の木が幣拝殿の向こうにそびえています。
御祭神 建御名方神の伝承
建御名方神をめぐっては、古事記などのなかに、さまざまな逸話が残されています。
- 鹿島神宮の神様「建御雷之男神」(たけみかずちのお)という神様との戦いに敗れ、この地に鎮まった
- 土着の神様に打ち勝ち、この地を制圧した
- 神様同士の会合に龍の姿で現れた
こうした伝説がさまざまなご利益の根拠になっています。
諏訪大社 駐車場情報
諏訪大社は4つのお宮ともに無料の駐車場が完備されています。
駐車台数は以下の通り。
- 本宮:300台
- 前宮:60台
- 春宮:50台
- 秋宮:80台
祭事でもない限り、混雑はありません。
諏訪大社 基本情報&アクセス
諏訪大社の基本情報とアクセスは以下の通りです。
上社本宮
- 住所:長野県諏訪市中洲宮山1
- 電話:0266(52)1919
- アクセス:JR「茅野駅」下車、タクシー約10分
※前宮まで徒歩20分
上社前宮
- 住所:長野県茅野市宮川2030
- 電話:0266(52)1919
- アクセス:JR「茅野駅」下車、タクシー約10分
※本宮まで徒歩20分
下社春宮
- 住所:長野県諏訪郡下諏訪町193
- 電話番号:0266(27)8035
- アクセス:JR下諏訪駅下車、約20分
※秋宮まで徒歩約20分
下社秋宮
- 住所:長野県諏訪郡下諏訪町5828
- 電話番号:0266(27)8035
- アクセス:JR「下諏訪駅」下車、約13分
※春宮まで徒歩約20分
4社巡りはマイカーがおすすめ
諏訪大社はマイカーでの参拝を強くおすすめします。
最寄駅からの路線バスは廃線になり、タクシーを使わぬ限り相当アクセスが困難になっています。
上社
- 本宮:諏訪IC下車、約5分
- 前宮:諏訪IC下車、約10分
下社
- 春宮:岡谷IC下車、約15分
- 秋宮:岡谷IC下車、約15分
※上社から下社までは車で30分程度
諏訪大社 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、いにしえの聖地「諏訪大社」をご紹介しました。
長野県のパワースポットとしてはほかにも、ゼロ磁場で有名な「分杭峠」、古木の参道が魅力の「戸隠神社」がおすすめです。
長野のパワースポットについては、現地取材を通じて詳しい内容を一本の記事まとめていますので、ぜひ参考にしてください。
諏訪大社のまとめは以下の通りです。
- 諏訪大社は4つのお宮からなる
- 上社は男神、下社は女神を祭る
- ご利益は勝負運アップ、開運など
- 縁結びや良縁成就は下社での祈願がおすすめ
- 下社に神様がいるのは2月~7月が春宮、8月~1月が秋宮
- 最強のパワースポットが本宮にある
- 御朱印を4社分集めればきんちゃくがもらえる
- 本宮の御柱のなかで3の柱を見るけるのにコツがある
- イキガミ様の職位が実在した
- 前宮では鹿の肉を備えている
- 前宮はかつてミシャグジという神様を祭っていた
- 春宮には故・岡本太郎氏が絶賛した石仏がある
- 下社で観光的に見どころのが多いのは秋宮
- マイカーでのアクセスがおすすめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後ともご愛読の程、よろしくお願いいたします。