最上稲荷(さいじょういなり、岡山市)は、 敷地面積60万㎡を超える巨大な「お寺」で、岡山県を代表する紛れもないパワースポットです。
日本最大級の鳥居やガラス張りの仁王門など、見た目に楽しい「珍スポット」的な魅力もありますが、本殿の背後に迫る「龍王山」こそがパワースポットの本命で、一歩足を踏み入れた途端、空気が一変します。
京都の伏見稲荷大社同様、ところ狭しと並ぶほこらの一つひとつに敬けんな祈りがあり、山の中腹に林立する巨石群からは、ただならぬ気配が漂っています。
また最上稲荷には、縁切り・縁結び祈願で知られる「縁の末社」(えんのまっしゃ)もあり、見どころがたくさん。
お山めぐりも含めて、半日かけてじっくり参拝するのがおすすめです。
今回は、日本三大稲荷のひとつで、古い信仰のスタイルをいまも貫く「最上稲荷山妙教寺」に行ってきました。
見どころやご利益、パワースポット情報など、最上稲荷の魅力を余すことなくご紹介します。
Contents
最上稲荷 歴史のある「お寺」
最上稲荷は、「日蓮宗」という宗派のお寺で、実は神社ではありません。
創建は、いまから1300年近く前にさかのぼります。
仏様と神様を同一の存在としてあがめる「神仏習合」(しんぶつしゅうごう)のカラーを強く残しているのが特徴です。
お寺なのに鳥居があったり、巨大な注連縄(しめなわ)のかかる本殿に神様がお祭りされていたりと、少し違和感を覚えるかもしれませんが、「神仏習合」のスタイルは、明治になるまでごくありふれた形でした。
誤解を恐れずに言うと、「八坂神社」、「北野天満宮」、「石清水八幡宮」など、京都が誇るメジャー級の神社でさえ、もとはお坊さんがつくったお寺だったといわれます。
日本三大稲荷のひとつ? 参拝の作法は
最上稲荷は、第二次世界大戦の後、どの宗派にも属さない「単立寺院」になった時期もありましたが、2009年に日蓮宗に復帰し、現在に至ります。
そのため参拝に当たっては、本殿の前で「南無妙法蓮華経」と唱えて合掌し、住所、名前、誓いを念じるのが正式な作法となります。
ただ最上稲荷は「宗派・宗教にこだわらず、万人を受け入れる寺社」をうたっていて、「参拝方法はとくにこだわる必要はない」とのことでした。
ただし、最上稲荷はあくまでもお寺ですので、神社のように「ぱんぱん」と拍手(かしわで)は打たない方が無難です。
候補はほかにも
一方最上稲荷は、京都の伏見稲荷、愛知の豊川稲荷に並ぶ「日本三大稲荷」のひとつに数えられる寺社でもあります。
「日本三大~」は、得てして3番目の席が定まっていないケースが多く、ほかにも候補がこんなにたくさんあります。
- 竹駒神社(宮城)
- 笠間稲荷神社(茨城)
- 千代保稲荷神社(岐阜、記事あり)
- 瓢箪山稲荷神社(大阪)
- 源九郎稲荷神社(奈良)
- 草戸稲荷神社(広島)
- 祐徳稲荷神社(佐賀)
いずれにしても、候補に挙がる寺社が甲乙つけがたいほど素晴らしいのは間違いありません。
とくにパワースポットとして注目される「お稲荷さん」のいくつかは、最下段にリンクを貼っていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
最上稲荷 神様(本尊)とご利益は?
最上稲荷の本殿にお祭りされているのは、「最上位経王大菩薩」(さいじょういきょうおうだいぼさつ)、水をつかさどる「八大龍王尊」、「三面大黒尊天」の3尊。
一般的な稲荷神社に鎮まる「宇迦之御魂神」(うかのみたまのかみ)ではありません。
本殿に向かって中央に最上位経王大菩薩が陣取り、八大龍王と三面大国尊天が両脇を固めるレイアウトになっています。
このうち、メーンとなる神様が最上位経王大菩薩です。
最上位経王大菩薩は、最上稲荷を開いた「報恩大師」(ほうおんだいし)という偉いお坊さんが、龍王山の聖地「八畳岩」でつながった神様とされます。
左手に稲穂、右手には鎌を持つお姿で、とても慈悲深く、「五穀豊穣」「商売繁盛」「厄除け」「開運」などのご利益が授かれるといわれています。
※イラストはイメージです。
最上稲荷 パワースポットへは片道30分
最上稲荷のパワースポットといえば、「奥の院」(一乗寺)へと続く参道を兼ねた龍王山。
この山こそが「最上稲荷最大の聖地」といえ、いまも僧侶らの修行の場となっています。
結構大変な道のりとあってか、本殿エリアのにぎわいとは打って変わり、人が少なく、静けさに満ちています。
この霊場のなかでも、神様が降臨した「八畳岩」と、「南無妙法蓮華経」の7文字を刻んだ「題目岩」が外せないパワースポットといえます。
八畳岩を目指せば、自動的に「題目岩」を通ることになります。
また途中、「本滝」という滝行の場があり、神仏習合の残り香を漂わせています。
登拝口は霊応殿のすぐそば
八畳岩への登拝口は、本殿の裏手、境内の奥にある「霊応殿」と呼ばれる旧本殿のすぐそば。
白狐の像が両脇を固める鳥居とともに、「登拝に当たっての心得」などを記した白い看板が目印です。
道中、ここそこに点在する小さなほこらのなかには、神様の啓示を受けてお祭りした岩(磐座)などもあり、その一つひとつに深い祈りが込められています。
お稲荷さん特有の「濃密な質感」というのでしょうか、何も感じない方が不自然に思えるほどスピリチュアルな霊場で、時間の流れが止まったような不思議な空間が続きます。
八畳岩までは、片道約30分ほどの道のりになりますが、霊場をじっくり味わい、奥の院まで目指すとなると、往復2時間はみておくのが無難です。
上りは少々疲れますが、帰りは割と楽でした。
最上稲荷 各ポイントの詳細
最上稲荷の背後に控える龍王山は、とてもディープな霊場です。
ここでは、八畳岩をはじめとする個別のポイントについてまとめました。
八畳岩~聖地中の聖地~
八畳岩は、報恩大師が最上位経王大菩薩を感得した聖地。
岡山市ののどかな街並みを一望できる龍王山の山腹にあり、吹き抜ける風が幟(のぼり)をはためかせ、心地よく頬(ほほ)をなでていきます。
いつもより近くにある青空を、どっしりとした岩の上で眺めるのは最高の気分です。
最上稲荷は、そんな特別な聖地から始まったといっても過言ではありません。
ときは752年――。
報恩大師が、病に伏せる孝謙天皇(こうけんてんのう)の病気平癒を八畳岩で祈願していたところ、21日目の早晩、白狐にまたがった最上位経王大菩薩が降臨しました。
大師はその姿を刻み、祈り続けると、孝謙天皇の病は快癒します。
最上位経王大菩薩とつながった報恩大師はその後、桓武天皇の病も同じように治しました。
その確かな霊験が朝廷から認められ、この地には「龍王山神宮寺」が建立されました。
このお寺が最上稲荷の起源になったと伝わります。
八畳岩は、一つの岩を指すわけではなく、巨大な岩が重なり合ってできた巨石群からなります。
名前の由来は、一番上の岩が「畳(たたみ)八畳分の広さ」であることにちなみます。
下部は岩窟になっていて、このなかで報恩大師が祈願したとみられます。
屈まないと入れないくらいの大きさで、通常は立ち入り禁止になっています。
題目岩~スピリチュアルな空気漂う~
最上稲荷のパワースポットのなかでも、管理人の一押しは「題目岩」。
圧倒的な存在感に、思わず足を止めました。
岩の高さは8mもあるそうです。
巨岩にはお題目「南無妙法蓮華経」が刻まれ、その脇には仏教の守護神とされる「鬼子母神」の姿も。
遠くにある景色と一つになるような、どこか懐かしい、そこはかとない感慨がこみあげてくる不思議な空間です。
その感情の出どころははっきりしませんが、ディープな霊場の心臓部にいるような、妙な手ごたえがありました。
巌開明王~御神水湧く泉~
八畳岩のほど近くに湧く泉。
巌開明王という名称は、報恩大師が修行中に座っていた岩のひとつが割れ、そこから泉が湧き出したという言い伝えにちなみます。
泉に湧く御神水は飲用できませんが、同じ水源の水が「大客殿」(仁王門をくぐって左手)でくめるようになっています。
奥の院「一乗寺」
正式名称は龍王山一乗寺といいます。
龍王山の頂上にあり、八畳岩から歩いて15分ほどのところにあります。
見つけづらいところに「三角点」もありました。
ほこらや石碑が立ち並ぶ光景はとても壮観で、地元の人もお坊さんも、親切な方ばかりでした。
ただ、個々人の信仰の場という色彩が強く、節度を持った行動が求められるように思いました。
最上稲荷 鳥居も本殿も超巨大
パワースポットとしての魅力がたっぷり詰まった最上稲荷ですが、大迫力の建造物の数々も見逃せません。
巨大な鳥居や特大の注連縄、金ぴかの仁王門などがそびえ立ち、スマホのカメラをかざす人も少なくありません。
ここでは、そんな見ごたえのあるポイントをまとめました。
大鳥居~圧倒的なスケール~
最上稲荷のシンボルであり、地域のランドマークともいえる大鳥居。
鉄骨・鉄筋コンクリート造で、高さ27.5m、柱の直径4.6m、総重量2800tというとてつもない規模です。
日本一の大鳥居は、熊野本宮大社の旧社地「大斎原」(和歌山)にあり、その高さは約34mに及びますが、「赤に染まる巨大な鳥居」という点で、最上稲荷の大鳥居の存在感は圧巻です。
大鳥居の色付けに用いられているのは、ベンガラという塗料で、地元高梁市はその一大生産地でもあるそう。
伏見稲荷大社の記事でも触れましたが、鳥居の朱(赤)は「魔力」に対抗できる色とされます。
仁王門~仏舎利塔を彷彿させる装い~
登録有形文化財に指定されるきらびやかな仁王門。
お寺の入口に立つこの仁王門は、インドの殿堂様式を取り入れた石造りのタイプで、仏教考古学者・石田茂作博士の発案によるものだそうです。
2013年に改修され、その装いは一段と華々しくなりました。
仁王像は、ガラス張りのショーケースに安置されているようなイメージで、その奇抜な光景に思わずカメラのシャッターを切る人も少なくありません。
以前は木像の仁王門が参拝者を出迎えていましたが、1950年に山火事が原因で焼けてしまいました。
ところが、被害は仁王門だけにとどまったため、「仁王様が最上稲荷を救ってくれた」ものと受け止められ、一段と信仰が厚くなりました。
大注連縄~巨大な魔除け~
本殿の梁(はり)にわたされる巨大な注連縄(しめなわ)。
長さは約12m、太いところの直径は約1.8mあり、総重量は何と1.5t。
大注連縄にも魔除けの意味があるとされ、2年に1度の頻度で交換されています。
最上稲荷 縁の末社 口コミで好評も
「縁結び」と「縁切り」の神様をお祭りする最上神社の「縁の末社」(えんのまっしゃ)。
本殿に向かって右奥の階段を上ったところにあります。
縁の末社で面白いのは、良縁を結ぶための準備として、まず悪縁を絶つという考え方です。
縁の末社では、縁切りと縁結びの神様がそれぞれ個別に祭られていて、両方のお社をお参りし、祈願する形をとります。
もちろん、まずは「縁切り祈願」、そして「縁結び祈願」を行う流れになります。
口コミでは「効果があった」「悪い癖や病気との縁も切れる」「縁結びだけでなく縁切りもしっかりとしておくべきだった」などの報告が寄せられています。
ただ、その手順は少々ややこしいので、以下に概略をまとめました。
現地にもリーフレットがありますので、そちらを参考にするとより便利です。
縁切り祈願
- 「縁の末社」にある奉納品授与所で「縁切り札」(写真上)を購入し、祈願、名前、年齢を書き込む
- 縁きりの神様「最正位離別天王」(向かって左側のお社)にお参りする
- 続いて「縁切りなで石」(下段の写真参照)へ
- 悪縁退散を念じながら「時計回り」に一周した後、縁切り札を二つに割って、願いを込めつつ「縁切りなで石」を「右手」でなでる
- 縁切り札を所定の奉納所に納める
- 縁結びの神様「最正位縁引天王」(向かって右側のお社)にお参りする
- 最後に左側の「白潜り鳥居」から出る
「縁切りなで石」は回るのもなでるのも「右」と覚えておくとスムーズです。
縁結び祈願
- 奉納品授与所で「縁結び絵馬」を購入する
- 離別天王にお参り
- その後、縁引天王にお参り
- 「良縁なで石」へ
- 良縁成就を念じて反時計回り(左回り)で一周し、願いを込めつつ左手で「良縁なで石」をなでる
- 絵馬奉納所に「縁結び絵馬」を奉納する
- 最後に右側の赤潜り鳥居から出る
良縁なで石は、回るのもなでるのも「左」となります。
最正位縁引天王は、男女の縁だけでなく、仕事や学業、芸などにまつわるご縁も結んでくださるそうです。
なお、毎月7日の午前11時から、最上稲荷の住職が縁の末社の正式参拝を指南する催しが開かれます。
お茶菓子とともに「縁御守」が特別授与されます。
ご興味のある方はぜひ最上稲荷に問い合わせてみてください。
最上稲荷 御朱印
最上稲荷の御朱印です。
管理人は土曜日に参拝しましたが、待ち時間は15分程度でした。
志納料は300円。
御朱印に記される「妙法」とは、正しい教えという意味で、法華経を意味するそうです。
最上稲荷 基本情報
最上稲荷の基本情報は以下の通りです。
- 正式名称:最上稲荷山妙教寺
- 住所:岡山県岡山市北区高松稲荷712
- 電話:086(287)3700
- 拝観料:無料
- 拝観時間:境内自由
最上稲荷 駐車場&アクセス
最上稲荷の駐車場は、民間駐車場を利用する形となります。
境内の直下にある駐車場は、混雑が予想されない日は無料になるとの情報もありましたが、管理人は土曜日に参拝したため、500円かかりました。
電車での行き方
- JR桃太郎線「備中高松駅」下車、タクシーで約5分
車での行き方
- 岡山自動車道「岡山総社IC」下車、約10分
最上稲荷 遠方から参拝するには
遠方から参拝する場合は、早めの予約をおすすめします。
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管理人もいつも使っています。
(条件のいい宿から予約が埋まっていきますので、予約はぜひお早めに)
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最上稲荷 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は岡山が誇るパワースポット最上稲荷についてご紹介しました。
同じ岡山県内にある吉備津神社も、緩やかな傾斜を描く巨大な回廊があって、素晴らしいパワースポットでした。
個別記事にしていますので、よろしければ読んでみてください。
またお隣の島根県には、知る人ぞ知る超一級パワースポット「大神山神社奥宮」があります。
このほか、有名な稲荷神社の記事も多数掲載しています。
⇒東京都内屈指のパワースポット、代々木出世稲荷の記事はこちら。
本記事のまとめは以下の通りです。
- 最上稲荷は神社ではなく日蓮宗のお寺
- 明治時代にとられた神仏習合政策から難を逃れた
- 境内の龍王山がパワースポット
- 八畳岩と題目岩が大きな見どころ
- 観光拝観としても見ごたえ十分
- 縁切り・縁結びのスポットがある
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
内容を充実させてまいりますので、ご愛読の程、よろしくお願いいたします。